幻の動物
ハムスターが属しているげっ歯類の動物たちは、恐竜が絶滅してからそれほど間もない時代、今から6000万年前の新生代暁新世には地球上に出現していたと考えられます。
最初にげっ歯類が誕生したのは北アメリカ大陸で、リスに似た外見のパラミス(Paramys)が出現したあと、ネズミ類、続いてハムスター類と分岐していきました。
ちなみに現在のげっ歯目は地球上の全哺乳類の実に40%を占めています。
はじめてハムスターの記録が登場したのは、今から200年前のこと。
1797年に出版されたヨーロッパのアレクサンダー・ラッセルという医師の書いた本に記録が載っています。
そこには、ハムスターがほお袋にエサを詰め込む姿を見て、とても驚いたことが書かれていました。
ペットとして飼われているゴールデンハムスターは、1930年(昭和5年)にシリアのアレッポ近郊の地下約2mの巣穴で、エレサレムのヘブライ大学のアハロニ氏によって捕獲された1匹の雌とその12匹の仔の子孫が繁殖し、世界中に広まったものであるとされています。
当初の12匹のうち8匹が大学に送られ研究・繁殖が開始されましたが、そのうち4匹が脱走、1匹が個体間での争いのなかで死に、残った1匹の雌と2匹の雄の間で繁殖しました。
ここで繁殖して、1年で150匹に増えた子孫が翌年、イギリスに移されました。
発見当初から野生のハムスターはほとんどいないと言われていて、上記のように捕獲されて繁殖に成功するまで、「幻の動物」とまで言われていました。
日本に紹介されたのは1939年(昭和14年)ごろ
ハムスターはイギリスでも増えたので、さらにアメリカへ紹介されました。
ところがアメリカで、ハムスターが実験動物として注目され始めたことから、この子孫が世界各国の大学や医学関係の研究機関で、次第に飼われるようになっていったのです。
ハムスターが実験動物として価値が高いのは、繁殖させるのがやさしいことや、妊娠期間が短いこと、また粗食に耐えることやあまり大きくないので飼いやすいこと、などの理由からです。
ところで、日本に紹介されたのは1939年(昭和14年)ごろに、歯の研究のために輸入されたのが始まりのようです。
このころは、ハムスターもまだ「コガネキヌゲネズミ」と呼ばれていました。
ペットとして人々に広く親しまれるようになったのは戦後で、それも昭和40年代からのことです。