子供とペット
子供は、ペットに対して自然で真っすぐな愛情を抱きます。大人の場合は常に飼い主としての責任感などを考えてしまいますが、子供が抱く愛情はほかの何かに影響されることはほとんどありません。ペットが死んでしまうと大人から子供までみんなショックを受けますが、大人にはない子ども特有の症状がみられる場合もあります。
例えば、ペットに置いていかれたことへの恐怖、悪夢や不眠症などです。一度でもペットに対して「いあなくなればいいのに」とか「死んでしまえばいいのに」と思ったことがあると、ペットが実際に死んでしまった時に、それを自分がそんな風に思ってしまったせいだと考えてしまうのです。たいていの子供は自分の悲しみを言葉にして打ち明けることがあまりないので、両親が子供の行動や態度に注意しておく必要があります。
4、5歳以下の子供は、死を永久的なものであるとは考えず、死についてあまり理解ができません。ですから、死を説明するよりも心の支えになってあげることの方が大切です。
5歳から9歳くらいの子供は、死を恐ろしい存在として考えます。子供の方から積極的に質問をさせ、思いやりをこめて答えてあげることが大切です。
10歳くらいになると、死に対して大人と同じような認識を持ち始めます。子供がよく知っている単語を使って分かりやすく説明し、また自分自身でも納得できるように話をする必要があります。ペットを亡くして嘆き悲しむのは普通の反応なのだと納得させ、自分の悲しみをうまく表現する機会を与えてあげましょう。
気持ちを表現させる
子供に自分の思いを文章として書かせ、心の辛さをうまく表現できれば悲しみを乗り越えやすくなります。
次の文章は、10歳の少年バートが犬のラッキーの安楽死の際に綴った文章です。
「どうして?どうして?
絶対にスミス先生のせいだよ。もっと早くん病気を見つけてくれればよかったんだ。そうすれば手術をして、もうちょっと長く生きられたのに。
どうしてラッキーを死なせなくちゃいけなかったの?こんなのってないよ。僕、あと三日で歯の矯正が終わるところだったのに。きれいになった歯をラッキーに見てもらえなかったなんて。
癌だったなんて信じられないよ、あんなにに元気だったのに。お母さんも、もっと優しくしてあげればよかったんだ。
どうしてラッキーがこんな目に遭うの?これからは学校から帰ってきても、ラッキーは僕を出迎えてくれないんだ。遊んでから一緒に眠るの大好きだったのに。ラッキーのふわふわした耳が気持ち良くて好きだったんだ。
ねえ、僕が小さかった頃、ラッキーがおむつを追いかけていたの覚えてる?
なんだかおなかが痛くなってきちゃった。ラッキーよりも好きになれる犬なんて、これからも絶対にいないよ。」
田村博昭訳 Herbert A.Niebur Arlene C.Fischer著 ペットロス―家族動物の死を看つめて 文芸社 2004年 p70~71より抜粋
この少年は一般的な反応をいくつか示しています。まず怒りですが、ラッキーの病気について獣医師を非難しています。また、何とかして犬を救えたのではないかと想像したり、安楽死に対して疑問を抱いたり、ラッキーとの思い出を回想したりしています。
このように自分の考えや気持ちを書き綴ることによって、少しずつ悲しみから解放されていくはずです。また、感情を表に出したほうが、自分でもどうすればよいか分かってきます。
子供がペット・ロスから立ち直ることができるように、両親や周りの大人が見守ってあげることが大切です。死に関して一緒に話し合い、子供に質問を促して、わかりやすく答えてあげましょう。